この記事でわかること
- グレーゾーンの子どもの考え方
- グレーゾーンの子どもには支援は必要?
- 相談は早期が良い?
- 相談先の種類とそれぞれの特徴・活用方法
- さっぽろ羊の森の支援について
グレーゾーンの子どもとは? ASDにはあてはまらないの?
グレーゾーンは、診断名?
グレーゾーンとは正式な診断名ではありません。発達障害(神経発達症)の特性が部分的にあるものの、確定診断はつかない状態像について、便宜的にそう言われるようになりました。
ASD(自閉スペクトラム症)という診断名の由来からも、発達障害(神経発達症)は「ある/ない」の二択ではなく、特性の濃い状態像から薄い状態像までスペクトラム(連続体)である、という考え方が今は主流です。グレーゾーンという表現はスペクトラムのイメージとなじみが良く、「診断はつかないけれども特性がある」という段階が伝わりやすいこともあり、今では広く使われています。
なお、診断がつかないとは、診断基準(DSM-5、ICD-11参照)に部分的にあてはまるものがあるが、確定診断のための条件は満たしていない、ということです。
子どもにおいては、具体的には例えば以下のような特性が部分的にみられます(多くの特性があてはまるとすれば、すでにグレーゾーンではなく、診断名がつく可能性が高まります)。
認知面での特性
- 注意の切り替えが苦手
- 複数の指示をされても処理できない
- 見通しが立たないと不安になりやすい
- 特定の分野に強い興味や高い能力を示す
- 興味関心の幅が広がりにくい
- やったことのないことはやろうとしない
- それがふさわしくないときでも決まったやり方でやろうとする
- 臨機応変が苦手
- 核心よりも細部に注目しがち など
社会性・コミュニケーション面の特性
- 暗黙のルールの理解が難しい
- 相手の気持ちを想像したり読み取ることが不得手
- 自分の気持ちを言葉で表現しにくい
- 成長するにつれ(特に同年代の)友人関係に困難が出てくる
- 人に頼らず自己解決するかすぐあきらめがち
- 一方的に話してしまう
- 他者と共有したがることや他者を参照することが少ない など
感覚面の特性
- 音や光、触感などに極度に敏感または極度に鈍感
- 特定の食べ物の食感を極端に嫌がる
- 服のタグや縫い目を気にする など
グレーゾーンの子どもに支援は必要?
グレーゾーンの子どもの支援の必要性
いくつか特性があてはまるものの、医師の診察を受けた結果診断名がつかなかったという時、親としてホッとする気持ち…それは、自然なことです。
しかしそれが時として、障害と無縁であってほしいという親の願いから、「診断がつかなかった」という結果を「うちの子は配慮などいらない」に変換されてしまうことがあります。
そういった解釈は、長い目で見ると、必ずしも子どものためにはならないことが多いです。
なぜなら、診断がつくつかないにかかわらず、持っている特性はお子さん自身の生きづらさに直結している可能性が高いためです。
子どもは、不確かな世界の中で大人や他者を適切に頼りながら、成功体験や情緒的に認められる体験を通じて、徐々に自己効力感(世界の中で自分は力がある、やれるという感覚)を身につけていくプロセスをたどっていきます。
グレーゾーンにある子どもは、自分は多数派と何か異なっている部分があると察知していることも多く、その一方で大人や他者を適切に頼るスキルが弱い(一人で勝手にやるになりやすい)場合、大人は「当然やれるだろう」とみなし、本人は不安なまま一人でなんとかしていきます。このプロセスに、適切に他者に頼る経験もなければ、他者から保証や認められることもなく、自力によるか細い成功体験だけがある形で、そういった経験はなかなか自己効力感として積み重なっていきません。
しかし、見た目には「できている」。結果として「ほめられる」。ここで初めて不安が解消される子もいます。こうなると、「ほめられなければ不安」になる場合があります。ほめてもほめても自己肯定感が上がる様子がなく、現状維持にしかならない子の場合、そこまでのプロセスに大人が関与していないことが多いように思います。
診断がつかないからといって、支援が不必要、ということはありません。むしろ、問題として表立ってこないからこそ、大人側が積極的に気にかけて声をかけたり一緒にやったり細かいフィードバックをする心がけが要るのです。
自己効力感が育まれないまま育っていくと、うつや不安障害といった二次的な問題につながる可能性や、不登校・ひきこもりといった形で不安が顕在化する可能性があります。
相談は早期が良い? 問題が起こってからではダメ?
早期に特性がみられたならば、上記の理由から、親御さんが早期に相談につながることが大切です。
早期に気づいて、大人側が丁寧な子育てを心がけていくことで、放っておいては得られづらい自己効力感や自己肯定感を得ることにつながり、それが彼らの未来に待っている、より複雑な世界を戦っていくための土台となります。
どんなに知的に高かったとしても、グレーゾーンであれば、放っておいてよいということはありません。知的な発達と、情緒的な発達が見合っていない場合、その落差から、不安は高いものになりがちです。発達の高いところをほめるばかりでなく、低いところに照準を合わせて関わっていくことが、長い目で見て子どもの安定につながります。
また、少し大きくなったときに、子ども自身が自分の得意不得意を知ることで、自分がどこに身を置くかなどについて自分に合った選択を選べるようになります。
親御さんが相談先を得ることで、早期に親御さん自身が安定できるということも、子どもの育ちには大きいです。
昔にはなかった支援です。過保護だ、不要だという向きもあるかと思います。しかし、自閉的なお子さんは特に早期から大人が気づいて環境整備をし、大人からの働きかけを工夫することで、不要な傷つきを減らしていけます。人とのかかわりが心地よいものになるにつれ、人に期待することもできてきます。それは人と関係を結びたいと思う礎となります。人との関わりに対してネガティブでない、概ねポジティブでいられる構えは、大きくなってからも、対人関係や適応において力を発揮します。
【完全ガイド】グレーゾーンの子どもの相談先一覧
相談先には公的機関から民間サービスまで様々な選択肢があります。
それぞれの特徴を理解し、ニーズにあった場所を選びましょう。
各種支援機関比較表
支援機関 | 市区町村の保健センター・子育て支援センター | 発達支援センター・児童発達支援事業所 |
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特徴 | 乳幼児健診の延長として気軽に相談できる 保健師による発達相談が受けられる 地域の福祉サービスや療育機関の情報提供 | 発達に関する専門的な相談・評価が可能 必要に応じて療育サービスにつなげられる 心理士、言語聴覚士、作業療法士など専門職がいる |
メリット | 費用が無料または低額 地域の資源とつながりやすい 敷居が低く相談しやすい | 専門的なアセスメントが受けられる 療育サービスと連携しやすい 受給者証を取得すれば自己負担が少ない |
留意点 | 専門的なアセスメントには限界がある 継続的なカウンセリングは難しい | 初回相談まで数ヶ月待つこともある 診断がないと利用できないサービスもある 開所時間が平日昼間に限られることが多い |
こんな方におすすめ | まず誰かに話を聞いてもらいたい 地域の支援サービスを知りたい 費用を抑えたい | 専門的な発達検査を受けたい 療育を検討している 公的支援を活用したい |
支援機関 | 教育相談室・教育センター | 医療機関(児童精神科・心療内科) |
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特徴 | 学校生活での困りごとに特化した相談 教育委員会が運営する公的機関 スクールカウンセラーとの連携も可能 | 心理面・精神面の専門的診療 不安、うつ、トラウマなどへの対応 心理士がいる場合、心理検査や心理療法の実施が可能 |
メリット | 学校との連携がスムーズ 教育的な視点からのアドバイス 知能検査が可能 無料で利用できる | 医学的な診断が得られる 薬物療法が必要な場合に対応可能 保険適用で費用負担が少ない 二次的な心理的問題にも対応可能 |
留意点 | 学齢期の子どもが対象 医療的・心理的な支援は専門外 夏休みなど学校に合わせた休業がある | 初診までの待機期間が長い(数ヶ月~1年以上も) 診察時間が短いことが多い 困りごとが目立たない場合、継続したフォローを受けることが難しい |
こんな方におすすめ | 学校での困りごとが中心 就学相談を受けたい 特別支援教育について知りたい | 診断を受けたい 医学的な評価が必要 薬物療法を検討したい 専門的な心理治療を受けたい |
支援機関 | 臨床心理士・公認心理師による個人カウンセリング | 民間の発達支援専門機関 |
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特徴 | マンツーマンでの丁寧な相談 継続的な心理支援が可能 オンライン対応も増えている | 発達支援に特化したサービス 多職種チームによる包括的支援 プログラムやトレーニングの提供 |
メリット | 柔軟な予約調整が可能 じっくり話を聞いてもらえる 家族全体への支援も 夜間・休日対応の場合もある | 専門性が高い 個別のニーズに応じたプログラム 最新の支援方法を取り入れている |
留意点 | 費用は全額自己負担(1回5,000円~15,000円程度) カウンセラーの専門性にばらつきがある 医療行為(診断・投薬)はできない | 費用は全額自己負担で高額になることも 機関によってアプローチが異なる 質にばらつきがある |
こんな方におすすめ | じっくり継続的に相談したい 家族への支援も受けたい オンラインで相談したい 時間帯の融通を利かせたい | 専門的なプログラムを受けたい きめ細かい個別支援を求めている 費用よりも質を優先したい |
支援機関や支援者を選ぶ際の注意点
もし、私が親御さんから、支援機関や支援者を選ぶ際の注意点を訊かれたら、以下のように答えると思います。
問い合わせ時に、診断名がつかないと何もできない、とのみで片づけない支援者を選びましょう。
発達の高いところを見て、これだけあれば大丈夫、自分も発達障害の傾向があったがなんとかなっている、という言葉をかけられることがありますが、その人にとってそうであっただけで、気づかずに有形無形の支援がその人にあった可能性もあります。鵜呑みにしないようにしましょう。
早期の対応の大切さを理解している支援機関を選びましょう。
自閉スペクトラム症のお子さんの支援経験が豊かな支援機関を選びましょう。
社会適応だけでなく、その子が能動的に世界と関わっていけるようにという視点を忘れない支援者を選びましょう。
心理カウンセリング さっぽろ羊の森で行っている支援について
市立札幌病院静療院(現・ちくたく)で自閉症もしくはグレーゾーンのお子さんの早期療育に携わってきた、臨床心理士・公認心理師であるセラピストが、お子さんの発達や育て方について相談をお受けしています。
お子さんが1歳6か月からご相談可能です。スペースの関係から、お子さん自身への療育は行っておりませんが、医療機関で診断のついたお子さんや診断のつかないグレーゾーンのお子さんについて、スポット的にも継続的にもご相談いただけます。
オンラインでも可能なので、小さなお子さんがいて外出できない親御さんでも相談することができます。
その子なりの凹凸をとらえるための各種検査も可能です。
グレーゾーンのお子さん~成人の相談の受け皿として、広くご活用いただきたいと思っております。
心理カウンセリング さっぽろ羊の森でお待ちしています。
この記事は情報提供を目的としており、医学的診断や治療に代わるものではありません。個別の状況については、必ず専門家にご相談ください。